2010.09.16

美術手帖2010年10月号 特集「佐藤雅彦」

明日(書店の多くは本日16日)、発売される美術手帖の10月号は
特集「佐藤雅彦」です。

教育テレビの番組2355・0655や今開催中の展覧会や芸大での講義を大きく取り上げ、私の活動とその基になっている「考え方」を長い期間の取材やインタビューによって、解き明かしています。

私は「作り方を作る」「考え方を考える」ということを標榜し、
この30年間、何を作るにも、その作り方・考え方から新しくするということをやって来ました。
作り方や考え方が独自なものであれば、自ずと出来てくるものは独自なものになる と信じているからです。

今回の特集は、その過程が分かるような年表も付いています。
作り方を作るということを実践するために、活動する拠点を
電通 → トピックス → 慶応大学 → 芸大+ユーフラテス
と変えてきた流れとその理由も分かるようになっています。
その都度、会社員だったり研究者だったり教育者だったりするわけですが、立場と環境を変え、作るものを変えてきたのです。

普段は、テレビや雑誌などの個人としての露出は極力断っているのですが(自分が出るより作ったものが出るのが正しいと思っているので)、みなさんの生きていく過程になんらかのプラスになることを願って、この特集を受けました。

特集は90頁にも渉っており、
その中には、前出の展覧会や授業や2355などの写真や
その考え方があるのですが、
他には分子生物学者の福岡伸一さんとの対談(私たちの“本性”はどこにあるのか)や椹木野衣さんの評論 があり、個人的にはとても面白く
是非、読んでいただきたいものです。
他にも、これも自分と認めざるをえない展の昨年9月から作ってきた過程が
キュレーターの手記ということで載っていて、それを読むと
展覧会の作り方自体も作ってきたことが分かると思います。

表現に関わる方はもちろん、表現に関わっていない方にも
興味深い内容になっていますので、お手に取って読んでみてください。

佐藤 雅彦

美術手帖 2010年10月号(2010年9月17日発売)
出版社:美術出版社
Amazon

2010.09.04

書籍『属性』

「これも自分と認めざるをえない展」の開催を機に、
テーマである「属性」の書籍を著しました。

展覧会の図録としても会場では置かれますが、
会場で展示できなかった作品やワークショップ、対談や、ある短編小説まで収録してあり、属性をめぐる幅広くも深い考察に溢れています。
属性と自分の存在、さらに自分と世界との関係について知りたい方には是非、
読んでいただきたく思います。

この書籍で、新しく属性という観点から見た作家としては、ソフィ・カルやボルタンスキー。そして、脳科学研究者の入來篤志さんとの「属性と人間性の関係」をテーマにした対談、爆笑問題の太田光さんとの「属性と自分との距離」をテーマにした対談があります。
どれも、非常に面白いです。(太田さんは、この展覧会とこの対談で、一層元気にラディカルになったようです。)

そして、なんと、装幀は中島英樹さん。個人的には、装幀家・中島英樹の最高傑作ではと思っています。出来映えも素晴らしいのですが、中島さんと作っていく過程が本当に緊張感のある面白いものでした。中島さん、そして中島デザインの古谷さん、求龍堂の三宅さん、21_21の田中さん、本当にありがとう。

撮影は、東京芸大・映像研究科の博士課程に在籍している写真家・田村友一郎を抜擢し、芸大で展覧会を作っていく過程から会場の写真までを撮影してもらいました。素晴らしい写真ばかりで将来が楽しみです。

展覧会の開催から、一ヶ月以上が過ぎてしまい、甚だ遅くはありますが、図録としても、書籍としても、かなり意味深い一冊となりました。

大型書店、amazonなどでも手に入れることが可能なので、興味がある方は、是非どうぞ。

佐藤 雅彦

「属性 ーAttributeー」

出版社:求龍堂
著者 :佐藤雅彦
アートディレクション&デザイン:中島英樹
デザイン:古谷哲朗(中島デザイン)
写真 :田村友一郎
編集 :田中みゆき
編集コーディネイト:三宅奈穂美(求龍堂)
言語 :日本語・英語
価格 :2,300円(税抜)
Amazon.co.jp

書籍『属性』

表紙の水色は、青空の写真。
裏を返すと表4には、なんと穴が!
(カバーをはずしてさわってみてください。)

2010.08.17

日常にひそむ数理曲線 DVD-Book

私たちがいる現実とその裏にひそむ数理は、どのように関係しているでしょうか。

「日常にひそむ数理曲線」という科学映像は、日常と数学の関わり合い方を、面白い映像・うつくしい映像として見せることによって、日本人の理数離れに一矢を報いるために、Benesse教育研究開発センターと一緒に行ったプロジェクトです。

このプロジェクトの世の中への定着媒体として、DVD-Bookがとうとう完成しました。
映像はできていたのですが、内容をより面白く、より深くするための写真や解説を、小学館の力を得て、書籍という形で著しました。

 ・パラボラ(放物面)の形をしたヘラジカの角やメンフクロウの顔
 ・放物線が現れている鶴見虹子選手の北京オリンピックでの体操の演技
 ・食パンに見る反比例曲線
 ・セスナ機のプロペラをiPhoneで撮影した時に現れるタンジェント曲線
 ・スケボーの競技とサイクロイド曲線

などなど、とても興味深くも綺麗な曲線が書籍には収録されています。

進学を目の前に迎えている高校生、中学生。受験とは離れて、数学や物理の真の面白さ・美しさを知りたい大学生。授業で二次曲線や三角関数を楽しく示している教材を捜している教師の方々。本当は理科系にも興味はあるけど、なぜかくじけてしまった大人。そんな皆さんに、私と当時の慶応大学の佐藤雅彦研究室とユーフラテスとBenesse教育研究開発センターと小学館がおくる渾身のプロジェクトです。是非、ご覧になってください。

佐藤 雅彦

日常にひそむ数理曲線 DVD-Book

企画・制作 ベネッセ教育研究開発センター
      慶應義塾大学 佐藤雅彦研究室

監修    佐藤雅彦
装丁・本文デザイン 山本晃士ロバート
イラストレーション 山本晃士ロバート、石川将也
編集・執筆 佐藤雅彦+ユーフラテス
発行所 小学館

尚、DVDの言語は日本語ですが、英語字幕も付いています。
また、このDVDはリージョンフリーです。

Amazon.co.jp
紀伊國屋書店
楽天ブックス

2010.07.24

“これも自分と認めざるをえない” 展 ロゴマーク 六本木・東京ミッドタウンにあります21_21デザインサイトで、私がディレクションした展覧会「“これも自分と認めざるをえない” 展」が現在、開催されています。
その詳細は、21_21のホームページに載っており、私の主旨文もありますので、そちらを参照してください。


21_21ホームページ:http://www.2121designsight.jp/

ここでは、そのよりよい見方について、お伝えいたします。

【1】会場は、ひとりひとりの体験型の作品が多く、大変、混み合っています。 可能なら、週日(しかも、午前11時の開館に近い時間帯)に行くと、正しく鑑賞できます。もし、土日しか時間が取れない方も、お昼までに入ると、あまり並ばなくてすみます。

【2】正直、とても楽しいし面白い体験がたくさんできます。しかし、私がみなさんにやってほしいのは、楽しむだけでなく、その作品を体験することで得られる「新しい表象(気持ち)」をじっと静かに鑑賞し、それがなぜ自分に起こったのか、それはどういう意味を持つのかを考えてもらうということなのです。

“これも自分と認めざるをえない” 展 全景

例えば、
『指紋の池』では、普段は気にも留めない自分の属性のひとつである指紋というものに対して生まれてはじめて「いとおしさ」や「いつくしみ」が心の中にじんと生まれます。

『属性のゲート』では、male と書かれたゲートの前に立つと、もしあなたが男性なら、しばらくしてゲートがひらきます。女性なら、もうひとつの female のゲートが開きます。
他にも、年齢のゲートや笑顔を判断するゲートもあります。とても面白い体験ですが、当たった外れたということではなく、ゲートが開いたときにあなたの心のどこかに起こる「何者からか許された気持ち」を捉えてほしいのです。
誰から何を許されているのかを考えてほしいのです。

“これも自分と認めざるをえない” 展 全景

『属性の積算』では、自分に対して、「佐藤○○○あるいは山田○○○あるいは長島○○○あるいは・・」というような「あるいは、が付いた存在」を体験してほしいのです。社会は、まぎれもない自分に対して、あるいはをつけて、見ています。

『覗かれ穴』では、生まれて初めて感じる「あたらしい恥ずかしさ」を体験してほしいし、『1組・2組・3組・4組』では、自分が、何の基準か分からず分類されている際に感じる「妙な気持ち」「いやな感じ」を体験してほしいし、『2048』では、人類が今手に入れている生体認証の中で極端に精度の高い「虹彩認証」を使い、その精度の高さを保証している “ある理由” を基にした表現が生む「凄み」を体験してほしいのです。

『金魚が先か、自分が先か』では、自分という存在が自分にとって、どれほどのものかも思い知らされることになるだろうし、『新しい過去』では、 あなた自身の過去が、ご自分の中で更新されることで、自分の存在の確固とした拠り所としている「過去」に対して、可塑性を感じることになります。

『佐藤雅彦さんに手紙を書こう』では、生まれて初めて、自分の筆跡に裏切られる体験ができます。友人や恋人に裏切られたことはあっても、自分の属性のひとつである「自分の筆跡」に裏切られるのは初めてではないでしょうか。

“これも自分と認めざるをえない” 展 全景

他にも、招待作家の、Antony Gormley、大竹伸朗さん、Ari VersluisとEllie Uyttenbroek、米田知子さん、Alexa Wrightアレクサ・ライトの作品も、今回の展覧会のキーワードである「属性」から見ると、大変、興味深い鑑賞が得られます。

アミューズメントやテーマパークのように楽しい体験をして、あー面白かったで終わるのではなく、通常、美術館に来た時に行う鑑賞ということを行ってください。そちらの方が、得られるものの大きさも質も違います。

【3】友だちと行くと楽しいというようなことが、いろんなところで言われていますが、普通の展覧会のように、ひとりで体験し、じっと考えるということを想定して作りました。もちろん、友人と行くのは構いませんが、あくまで、自分一人の体験そして表象を鑑賞していただければ、と思います。

私は、本当の意味で、みなさんに楽しんでいただきたいのです。
多くの方に来ていただくより、来ていただいたひとりひとりが正しく鑑賞してもらうほうがうれしいのです。

佐藤雅彦

開館時間 11:00〜20:00(入場は19:30まで)
     但し、火曜日は閉館。

入館料やキュレーターによるギャラリーツアー(これはとてもいいです!)の案内は 21_21のホームページで見てください。

2010.06.30

INFLUENCE(インフルエンス)が、
アメリカのPlayStation Store でも発売されました。
日本のPlayStation Store でも、好評配信中です。
じっくりと思考に耽ることができるゲームなので、梅雨時にぴったりです。
ぜひ、遊んでみてください。

トピックス 研究員 石川将也
INFLUENCE その一手が及ぼす影響力

INFLUENCE(インフルエンス)
企画・開発:G Game Workshop
発売   :ソニー・コンピュータエンタテインメント
ジャンル :パズルゲーム
対応ハード:PSP、PSPgo(ダウンロード販売専用ソフト)
価格   :800円
INFLUENCE 特設ウェブサイト

2010.06.11

ビジュアルとしての文字「日本代表」

ワールドカップ日本代表を応援する、アニメーションを作りました。
日本代表メンバーの名前をビジュアルにしたかっこいいアニメーションです。

うごく-IDでは待ち受けを、天才デコメスキーではメールで送れるテンプレートを配信しています。 他にも、ワールドカップコンテンツを作りましたので見てください。アイデアは佐藤雅彦、デザインは中村至男です。

また、同じ考え方による表現を、NHK教育テレビ「0655」「2355」でも放送して います。

トピックス

うごD・デコメスキーへの行き方: 下のQRコードから、アクセスしてください。

うごD・デコメスキーQRコード

2010.05.27

INFLUENCE その一手が及ぼす影響力

PSPのゲームソフトを作りました。
タイトルは「 INFLUENCE 」。

東京芸術大学の映像研究科で、
私と博士課程に在籍していた安本匡佑君と
トピックス研究員の石川将也君と、
3人で新しいゲームの作り方を模索するワークショップ
〈G Game Workshop〉を2008年秋に立ち上げました。
そして、その最初の成果が、この「 INFLUENCE 」です。

映像を作る方法論として、私は今まで「ルール」「トーン」というものを確立し てきましたが、このゲームではさらに新たな方法論を試しました。
この新たな方法論と従来の「トーン」という二つの方法論を活用して、出来たの が「 INFLUENCE 」です。より詳しくは、下記のリンクからインフルエンスのweb サイトをご覧になってください。
このwebサイトには、〈G Game Workshop〉のことや我々のインタビューやゲーム の内容も載っていて、かなり興味深く読めるのではないかと思います。行ってみ てください。

私が過去作ったポリンキーやバザールでござーるなどの多くのCMやピタゴラス イッチなども背景にある表現方法など気にせず、楽しんでもらえたように、この インフルエンスも、まずはPLAYして楽しんでいただきたいと思います。

では、「その一手が及ぼす影響力 ーINFLUENCEー 」を是非、堪能し、はまって ください。

佐藤 雅彦

INFLUENCE 公式ウェブサイト(Sony Computer Entertainment)

2010.04.05

もぐらバス

うちのますみさんといっしょに絵本を作りました。
「もぐらバス」と言います。

とても、かわいらしい世界観そして物語です。
偕成社から4月頭に出版されます。

装幀は、ユーフラテスの貝塚智子さんです。

佐藤 雅彦

著者  : 佐藤 雅彦 + うちの ますみ
出版社 : 偕成社
定価  : 1,050円(5%税込み)

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