「差をとる」ことで新しい何かが生まれる
「差をとる」ことで新しい何かが分かる
人間は、いろいろな感覚において、常に差を取り続けて生きています。動きが見えるのも、音楽が聴けるのも、物語を感じるのも、すべて差をとった結果なのです。差を取って初めて、それが可能になるのです。
この本では、静止画の組をたくさん開発・制作し、それを1組1組、読者の方に視覚情報として呈示します。そして、読者の方が、それらの図像の差分を取ったときに、ある新しい表象(=あじわったことのない気持ち)が生まれることをまず一番の大きな目的とし、その後でそれがどういう意味を持つのかということを鑑賞してもらうことを次の目的としています。
2〜5枚の絵を続けて見たときに、
ふいに立ち上がる我々内部の得体の知れない表象。
1頁1頁、じっくりご覧になり、また読み進めていってほしいと思います。
いっしょに研究し制作したのは、慶應大学の佐藤研の研究員だった石川将也と菅俊一です。3人で、この4年間、毎週毎週かかさず集まり作り続けました。私自身も、この書籍が、未来にどういう意味を持つのか、まだ計り得ないのですが、とにかく面白くて夢中になって作りました。慶應大学の佐藤研の名前で出版する書籍としては最終のものになります。是非、手にとっていただきたいと思います。本文中、内容的に必要なため、硬質塩ビ(アリンダ)の頁がたびたび登場しますので、それもご期待ください。価格が高いと思いますが、そのためです。
茂木健一郎さんは、この本に収録されている私との対談で、こう述べています。
……要するに、Aの中にもBの中にも存在しないんだけど、AとBの差の中にだけ見い出せるものがあるということですね。
私たちは、自分にどんな情報をいれるとどのように解釈(解答)をするのか、自分のことなのに、まったく分かっていません。そして、自分が出す解答に一番驚くのはもちろん自分なのです。『差分』は、それを知ることができる本なのです。
佐藤 雅彦
『差分』
出版社 美術出版社
頁数 210頁
著者 佐藤雅彦・菅俊一・石川将也
価格 本体2600円(税別)
Amazon.co.jp/差分