2010.07.24

“これも自分と認めざるをえない” 展 ロゴマーク 六本木・東京ミッドタウンにあります21_21デザインサイトで、私がディレクションした展覧会「“これも自分と認めざるをえない” 展」が現在、開催されています。
その詳細は、21_21のホームページに載っており、私の主旨文もありますので、そちらを参照してください。


21_21ホームページ:http://www.2121designsight.jp/

ここでは、そのよりよい見方について、お伝えいたします。

【1】会場は、ひとりひとりの体験型の作品が多く、大変、混み合っています。 可能なら、週日(しかも、午前11時の開館に近い時間帯)に行くと、正しく鑑賞できます。もし、土日しか時間が取れない方も、お昼までに入ると、あまり並ばなくてすみます。

【2】正直、とても楽しいし面白い体験がたくさんできます。しかし、私がみなさんにやってほしいのは、楽しむだけでなく、その作品を体験することで得られる「新しい表象(気持ち)」をじっと静かに鑑賞し、それがなぜ自分に起こったのか、それはどういう意味を持つのかを考えてもらうということなのです。

“これも自分と認めざるをえない” 展 全景

例えば、
『指紋の池』では、普段は気にも留めない自分の属性のひとつである指紋というものに対して生まれてはじめて「いとおしさ」や「いつくしみ」が心の中にじんと生まれます。

『属性のゲート』では、male と書かれたゲートの前に立つと、もしあなたが男性なら、しばらくしてゲートがひらきます。女性なら、もうひとつの female のゲートが開きます。
他にも、年齢のゲートや笑顔を判断するゲートもあります。とても面白い体験ですが、当たった外れたということではなく、ゲートが開いたときにあなたの心のどこかに起こる「何者からか許された気持ち」を捉えてほしいのです。
誰から何を許されているのかを考えてほしいのです。

“これも自分と認めざるをえない” 展 全景

『属性の積算』では、自分に対して、「佐藤○○○あるいは山田○○○あるいは長島○○○あるいは・・」というような「あるいは、が付いた存在」を体験してほしいのです。社会は、まぎれもない自分に対して、あるいはをつけて、見ています。

『覗かれ穴』では、生まれて初めて感じる「あたらしい恥ずかしさ」を体験してほしいし、『1組・2組・3組・4組』では、自分が、何の基準か分からず分類されている際に感じる「妙な気持ち」「いやな感じ」を体験してほしいし、『2048』では、人類が今手に入れている生体認証の中で極端に精度の高い「虹彩認証」を使い、その精度の高さを保証している “ある理由” を基にした表現が生む「凄み」を体験してほしいのです。

『金魚が先か、自分が先か』では、自分という存在が自分にとって、どれほどのものかも思い知らされることになるだろうし、『新しい過去』では、 あなた自身の過去が、ご自分の中で更新されることで、自分の存在の確固とした拠り所としている「過去」に対して、可塑性を感じることになります。

『佐藤雅彦さんに手紙を書こう』では、生まれて初めて、自分の筆跡に裏切られる体験ができます。友人や恋人に裏切られたことはあっても、自分の属性のひとつである「自分の筆跡」に裏切られるのは初めてではないでしょうか。

“これも自分と認めざるをえない” 展 全景

他にも、招待作家の、Antony Gormley、大竹伸朗さん、Ari VersluisとEllie Uyttenbroek、米田知子さん、Alexa Wrightアレクサ・ライトの作品も、今回の展覧会のキーワードである「属性」から見ると、大変、興味深い鑑賞が得られます。

アミューズメントやテーマパークのように楽しい体験をして、あー面白かったで終わるのではなく、通常、美術館に来た時に行う鑑賞ということを行ってください。そちらの方が、得られるものの大きさも質も違います。

【3】友だちと行くと楽しいというようなことが、いろんなところで言われていますが、普通の展覧会のように、ひとりで体験し、じっと考えるということを想定して作りました。もちろん、友人と行くのは構いませんが、あくまで、自分一人の体験そして表象を鑑賞していただければ、と思います。

私は、本当の意味で、みなさんに楽しんでいただきたいのです。
多くの方に来ていただくより、来ていただいたひとりひとりが正しく鑑賞してもらうほうがうれしいのです。

佐藤雅彦

開館時間 11:00〜20:00(入場は19:30まで)
     但し、火曜日は閉館。

入館料やキュレーターによるギャラリーツアー(これはとてもいいです!)の案内は 21_21のホームページで見てください。

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